ヒマジンガーヨコハマにあらわる

ハードカバー版詩集について

岡田寿彦の詩集『ヒマジンガー ヨコハマにあらわる』は1988年にハードカバーの書籍として大阪書籍から刊行されましたが、現在は絶版になっています。 インターネットの古書販売にはほぼ常時出品されていますので、お手頃な価格になったときを見計らってお求…

ヒマジンガー ヨコハマにあらわる  目次

しかける三部作 01 けしかけるうた 02 おしかけるうた 03 こしかけるうた つまらぬ三部作 04 つまらぬしごと 05 つまらぬ妻ら 06 つまらながってる妻ら ヒマジンガーZ登場 07 そのころ 08 あるいてばかり 09 病み上がりのうた 10 樹の見える喫茶店 11 ヒマ…

ほんをだす  78

ーー大阪書籍の発展を祈ってーー ほんをだす このわてが わらわんと おくれやす どないだす? おもろいか? たのんます 笑(わ)ろたって タダのほん 違(ちゃ)いまっせ 売りにだす つもりだす 買(こ)うたるわ いうひとは ええひとや わて好きや 売ったる…

ありあわせ  77

しあわせ? それとも ふしあわせ? いえいえ ぼくは ありあわせ 住む部屋 着る服 ありあわせ している仕事も ありあわせ つきあう相手も ありあわせ 趣味といったら ごろあわせ

しごとのかえり  76

ことばのあそびに ちみちをあげる かえるみちみち かんがえる むちゅうになって みちまちがえる あのまち このまち ひがくれる

ゴロエモンと御老公  75

きけば おぬしの祖先は 根来忍者の宗家であったそうなが 子孫のおぬしは このごろ ごろ寝ばかり てごろな仕官の口は断るし はてさて いかなる料簡かのう 御老公のねんごろなるお言葉 かたじけない されど よそ目に修行と見えたとあっては 忍びの修行とは申せ…

といかけるうた  74

どてのさくらは さいたかい かわにボートは ういたかい でかけなくても いいのかい はながちっても へいきかい あそこのアパート あいたかい でていかないのは あいつかい たなちんためてて へいきかい おいだすてだては ないのかい おまえのおやじも おいた…

けしからぬうた  73  

つつじさき きじがなき ふじがみえ にじがたち びじんきて もじもじし ひじつつき めをとじる

くも  72

雲は 苦もなく ながれてく ぼくは からくも 生きのびる 雲には 苦もなく 楽もない ぼくには 苦もある 楽もある ぼくには 手もある 足もある クモには 手はない 足はある クモにあるのは 足か 手か ほんとは ぼくも わからない

ヤクーツクのうた  71

きみ きをつけろ やくどしだ きみも そろそろ やくつきだ やくのつくのが やくつきで もちをつくのが もちつきだ もちをやくのは もちあみで はだをやくのは マイアミで せわをやくのが せわやくで かおをやくのが かおやくだ

かじやのかじ  70

かじはどこじゃ かじやがかじじゃ かじやのかじじゃ きじにはならぬ ぶじにのがれた かじやのおやじ こじきになって みじめなきもち まじめなおやじにゃ なじめぬこじき こじきしたとて はじではないぞ かじをだしたは どじではあるが くじけちゃいけない し…

かないのいなか  69

かないのいなかは かなりのいなかでね わっかないの もっとさきなんだが よるになると おっかないくらいだ ガスなんかないから おゆだって ちょっとやそっとじゃ わかないし まったく かないませんよ でも よかったら こんど いっしょに いかないか

けさもさけ  68

けさもけさとて あさげもとらず さむけがするとて さけびたり さけをくらって おけさをうたい おさげのむすめに わるふざけ さけださけだと さけぶをきけば むねがさけます なさけない てなべさげての なかではあるが さけりゃよかった さけのみは ふうふの…

詩かけ人ゴロアワセントス  67

とっかかりは ごろあわせ ごろあわせが いきづまる いきづまる一瞬 意味のうねりが うかびあがる とっかかりは ごろあわせ ごろあわせが いきすぎる いきすぎる一瞬 われながら あほらしくなる

疲れたら  66

疲れは顔に出る 声に出る 態度に出る 疲れると ひとに冷淡になる 親しいひとには わがままをいう だれだってそうなる あなただってそうなる おそらく それは意志を超えた法則 それ以上疲れないための自然な防衛 ひとを愛するには エネルギーが必要だ 疲れた…

スワンガー氏北海道へ行く  65

スワンよ スワンよ 有珠(うす)湾の スワンよ なぎさに立つわたしに しずかにおよぎより えさをくれるとおもうのか じっとわたしを見ている 有珠湾の スワンよ 吸わんよ 吸わんよ もう吸わんの? 吸わんよ 吸わぬというわたしと 机を並べるS君は そのうち…

スワンガー氏はなぜ辞めたか  64

われ十有余にして喫煙を始め 三十にして断ち 三十五にして惑い すいませんが ちょっと一本 ひとの煙草に手を出し 以来 すいませんすいませんと言いつつ吸い 四十に近づくにつれ 再び喫煙常習者となるの兆し 無きにしもあらざるをいかんせん われ この難局に…

エラリー氏の成熟  63

いばったり じまんしたりするひとは じぶんはえらい と おもっているようにみえますが ほんとは そうではないのですね じぶんはえらい と じぶんだけで おもいきれないから ひとから えらい と いってもらいたいのですね それも 三年さき 五年さき というの…

タノシマントスの憂鬱  62

楽しまなくてはと考えている君は 有能で勤勉なビジネスマンに似ている 情報を集め 電話をかけ 手帳に書き込み 自由になる一日とか一晩とかのために 最上のプランを立てようと心を砕く どれだけ楽しめたかと思い返している君は 株主総会を控えた経営者に似て…

キメルノイヤー氏のスケジュール  61

はいはいはい わたしです え 来週の火曜日ですか うーん と いや ふさがっているというわけではないんですが ちょっと どうなるかわからないんです ええ ええ それは関心は大いにありますから ぜひ参加させていただきたいと思うんですが どうも事態が流動的…

わかってください  60

あなた じぶんの好きなイメジ 相手にかぶせます でも すぐ げんめつします あなた 相手のこと よくしようと がんばります でも すぐ サジなげます あなた きっと いいひと あなた すぐ おもいます このひと いいひと でも いいひと そんなにいない いいひと…

がんばちゃか節  59

がんばりや と ちゃっかりや ちゃっかりや と がんばりや ひとりががんばる ひとりはなまける ひとりがなまける ひとりはがんばる がんばちゃか がんばちゃか がんばりやは はらがたつ ちゃっかりやに はらがたつ どうして! じぶんだけ! こんなに! がんば…

親切  58

親切をしたがる人には 親切にしてもらう それも その人に対するひとつの親切だ そう思って 有難迷惑の親切に礼など言っている そうしたこちらの親切にはまるで気づかず あくまで自分は親切だと思っているらしい そんな相手には そう思わせておいてあげる そ…

ちがう  57

気まずさを救おうとして しゃべりたくもないことを むりにしゃべる それが ひとへの親切だ と おもっている でも それはちがう しゃべっているうちに ひとがみえなくなる ひとが話そうとしないのだから じぶんが なにをしゃべってもいいのだ と おもっている…

笛吹きキエロのうた  56

ふえをふいても おどらぬときは ふけばふくほど はらがたつ そこをこらえて きをとりなおし ふえのふきかた かえてみる ふきかたかえても おどらぬときは ふえをふくのを やめにする やめて そのまま どこかへ きえる さもなきゃ じぶんが おどりだす

出張  55

この地では 川はどこを流れているか 列車が駅に近づくと 窓から目くばりおこたりなく 改札口を出ると まず川をめざす 川にいきつくと 川に沿ってあるく 川に沿ってあるいていると 橋が見える 橋が見えたからには これを渡る ゆっくりと 渡っていく 橋のなか…

なにか  54

あなたのいきたいどこかはどこか? ここではないとこ ちがうとこ あなたのやりたいなにかはなにか? これではないこと ちがうこと あなたのもとめるなにかはなにか? ひとのほしがるものばかり

堅実なイチローのうた  53

連日 くびふり ただひとり 堅実一路で生きていく 堅実一路の生なれど 連日 くびふり ぼやいてる 堅実一路の そのなかで 真実生きろ の声を聞く 真実生きろ の声聞けど 連日 くびふり 聞かぬふり

とれないやすみ  52

やすみのけんりは あるのだけれど なかなか やすめぬ やすまれぬ ひとが やすみを とらないときは じぶんも なかなか やすまれぬ やすみをほしいと いいだすときは きかれもせぬのに わけをいう あす やすむか と こえかけられて やすみません と くびをふる…

いいかげんにしろ  51

いいかげんにやるしかない仕事がある いいかげんにやるしかない仕事を いいかげんにはやるまいとすれば どうしたって かげんがわるくなる かげんがわるくならないようにするには それこそ いいかげんにやるしかないが いいかげんにやっていると いいかげんな…