2013-12-02から1日間の記事一覧

ひらら  高崎のカフェ「比良羅」で

はるのひるどき たかさきに ふらりとおりて ほりばたを ひとりあゆめば はながちる ひららはららと はながちる はるのひるどき ほりばたの 比良羅でひとり コーヒーを のめばひららと はながちる ひららはららと はながちる はるの日が暮れ ほりばたの はな…

夢の中で

北鎌倉の画家 田口弘勝さんの個展のために 彼は少年のように山や谷を探検し 落ちかかってくる風景の断片を拾い集める 持ち帰った風景の断片を彼は天井から吊し それを見上げながら眠りに落ちる 夢の中では広場に人が集まっていて そこで彼は一場の演説を試み…

たそがれは

北鎌倉のギャラリー・ネストで松井陽水さんの彩墨画「白暮の調べ」を観て たそがれは―― ひたひたと想像の水位が高まるとき あらゆる境界が 薄れ 消えてゆくとき ほのかに光を放つ遠い記憶を追って 時の流れに掉さす あなたのゴンドラが 波の上にたゆたうとき

十二月のサルビア

みちばたの ちいさな花壇に ひとむれ 立ち枯れた サルビアの かわいた花弁が 風に鳴る 十二月の風に からからと鳴る わたしは あゆみをとめて 地に生えたドライフラワーの 色あせた花穂に手をふれてみる それから また あるきだす こころよ からになれ から…

幻花

群馬県群馬郡榛名町にある 坂東三十三箇所観音霊場の第十五番札所 白岩観音を目指し 高崎の街から北西に向かって歩きだしたのは 秋の彼岸の土曜日の午後 市街地を抜けるあたりから雨になったが 降るとも言えぬほどの小糠雨で 空は歩き始めた時よりかえって明…

青森港

十二年前函館駅のホームに立って 乗って帰ろうかと迷ったあげく とうとう乗らなかった連絡船 今はメモリアルシップとなって つながれている八甲田丸 キャビンの窓辺でコーヒーを飲み 船を下りて芝生を歩いて行くと センサーを仕込んだ歌謡碑から 流れ出す「…

からだのこえ

からだが いうこと きかぬのは からだの いうこと きかぬから からだの いうこと きかぬのは からだを 道具と おもうから 道具は ものをいわないが からだは ものをいっている いうこと きいてやらぬから からだも いうこときかぬのだ からだが いうこときか…

ないぞう

まけないぞう まけないぞう からだのじょうぶな このわたし いそがしくっても まけないぞう あぶないぞう あぶないぞう そんなにむりを していると あなたのからだが あぶないぞう まけないぞう まけないぞう こころもじょうぶな このわたし そんなおどしに…

よくあるはなし

このごろ こころが さえないわけは からだの ちょうしが よくないからだ からだの ちょうしが よくないわけは からだに むりを させてるからだ からだに むりを させてるわけは あっちも こっちも たてたいからだ あっちも こっちも たてたいという よくがあ…

えーかっこしー

ほんとのところは Cだけど そのままみせては つまらぬと Bのふりしてみせるのだ さらには もひとつ せのびして Aのふりしてみせるのだ これを記号であらわすと C → B(C) → A(C)

おもいやり

あなたの やりは おもいやり ぶるん ぶるんと ふりまわし ここぞと みれば ふみこんで ぐいと つきだす おもいやり わたしの やりは かるいやり あまり あいてに ちかづかず すこし はなれた ところから なげる なげやり かるいやり

聴役(ききやく)一日洗愁亭

みずとみどりの見える道 あなたとともにあゆみつつ しずかに耳を傾ける 聴役一日洗愁亭(ききやく いちじつせんしゅうてい) みずとみどりの見える店 あなたとお茶をのみながら ひたすら耳を傾ける 聴役一日洗愁亭 あなたのことばをうけとめて あれこれ問わ…

ブログ版詩集の発信にあたって

岡田寿彦詩集『ヒマジンガー ヨコハマにあらわる』は、1988年3月に大阪書籍からハードカバーの書籍として刊行され、現在は絶版となっています。古書店の店頭に出ることはめったにありません。収蔵している図書館は、ごくわずかです。 インターネットを使った…

ほんをだす  78

ーー大阪書籍の発展を祈ってーー ほんをだす このわてが わらわんと おくれやす どないだす? おもろいか? たのんます 笑(わ)ろたって タダのほん 違(ちゃ)いまっせ 売りにだす つもりだす 買(こ)うたるわ いうひとは ええひとや わて好きや 売ったる…

ありあわせ  77

しあわせ? それとも ふしあわせ? いえいえ ぼくは ありあわせ 住む部屋 着る服 ありあわせ している仕事も ありあわせ つきあう相手も ありあわせ 趣味といったら ごろあわせ

しごとのかえり  76

ことばのあそびに ちみちをあげる かえるみちみち かんがえる むちゅうになって みちまちがえる あのまち このまち ひがくれる

ゴロエモンと御老公  75

きけば おぬしの祖先は 根来忍者の宗家であったそうなが 子孫のおぬしは このごろ ごろ寝ばかり てごろな仕官の口は断るし はてさて いかなる料簡かのう 御老公のねんごろなるお言葉 かたじけない されど よそ目に修行と見えたとあっては 忍びの修行とは申せ…

といかけるうた  74

どてのさくらは さいたかい かわにボートは ういたかい でかけなくても いいのかい はながちっても へいきかい あそこのアパート あいたかい でていかないのは あいつかい たなちんためてて へいきかい おいだすてだては ないのかい おまえのおやじも おいた…

けしからぬうた  73  

つつじさき きじがなき ふじがみえ にじがたち びじんきて もじもじし ひじつつき めをとじる

くも  72

雲は 苦もなく ながれてく ぼくは からくも 生きのびる 雲には 苦もなく 楽もない ぼくには 苦もある 楽もある ぼくには 手もある 足もある クモには 手はない 足はある クモにあるのは 足か 手か ほんとは ぼくも わからない

ヤクーツクのうた  71

きみ きをつけろ やくどしだ きみも そろそろ やくつきだ やくのつくのが やくつきで もちをつくのが もちつきだ もちをやくのは もちあみで はだをやくのは マイアミで せわをやくのが せわやくで かおをやくのが かおやくだ

かじやのかじ  70

かじはどこじゃ かじやがかじじゃ かじやのかじじゃ きじにはならぬ ぶじにのがれた かじやのおやじ こじきになって みじめなきもち まじめなおやじにゃ なじめぬこじき こじきしたとて はじではないぞ かじをだしたは どじではあるが くじけちゃいけない し…

かないのいなか  69

かないのいなかは かなりのいなかでね わっかないの もっとさきなんだが よるになると おっかないくらいだ ガスなんかないから おゆだって ちょっとやそっとじゃ わかないし まったく かないませんよ でも よかったら こんど いっしょに いかないか

けさもさけ  68

けさもけさとて あさげもとらず さむけがするとて さけびたり さけをくらって おけさをうたい おさげのむすめに わるふざけ さけださけだと さけぶをきけば むねがさけます なさけない てなべさげての なかではあるが さけりゃよかった さけのみは ふうふの…

詩かけ人ゴロアワセントス  67

とっかかりは ごろあわせ ごろあわせが いきづまる いきづまる一瞬 意味のうねりが うかびあがる とっかかりは ごろあわせ ごろあわせが いきすぎる いきすぎる一瞬 われながら あほらしくなる

疲れたら  66

疲れは顔に出る 声に出る 態度に出る 疲れると ひとに冷淡になる 親しいひとには わがままをいう だれだってそうなる あなただってそうなる おそらく それは意志を超えた法則 それ以上疲れないための自然な防衛 ひとを愛するには エネルギーが必要だ 疲れた…

スワンガー氏北海道へ行く  65

スワンよ スワンよ 有珠(うす)湾の スワンよ なぎさに立つわたしに しずかにおよぎより えさをくれるとおもうのか じっとわたしを見ている 有珠湾の スワンよ 吸わんよ 吸わんよ もう吸わんの? 吸わんよ 吸わぬというわたしと 机を並べるS君は そのうち…

スワンガー氏はなぜ辞めたか  64

われ十有余にして喫煙を始め 三十にして断ち 三十五にして惑い すいませんが ちょっと一本 ひとの煙草に手を出し 以来 すいませんすいませんと言いつつ吸い 四十に近づくにつれ 再び喫煙常習者となるの兆し 無きにしもあらざるをいかんせん われ この難局に…

エラリー氏の成熟  63

いばったり じまんしたりするひとは じぶんはえらい と おもっているようにみえますが ほんとは そうではないのですね じぶんはえらい と じぶんだけで おもいきれないから ひとから えらい と いってもらいたいのですね それも 三年さき 五年さき というの…

タノシマントスの憂鬱  62

楽しまなくてはと考えている君は 有能で勤勉なビジネスマンに似ている 情報を集め 電話をかけ 手帳に書き込み 自由になる一日とか一晩とかのために 最上のプランを立てようと心を砕く どれだけ楽しめたかと思い返している君は 株主総会を控えた経営者に似て…