夢の中で
北鎌倉の画家 田口弘勝さんの個展のために
彼は少年のように山や谷を探検し
落ちかかってくる風景の断片を拾い集める
持ち帰った風景の断片を彼は天井から吊し
それを見上げながら眠りに落ちる
夢の中では広場に人が集まっていて
そこで彼は一場の演説を試みたりするが
彼が何を言っているのか分かる人はいない
でも
彼が何を言っているのか分からなくても
そんなことに構わず彼を愛する人はいて
その愛情に支えられて彼は
夢の中で仕事に打ち込む
夢の底を流れる水に風景の断片を晒し
夢の中を吹く風に当てて
濡れた風景の断片を乾かす
そんな昼と夜とが幾つも重なったあとで
ある朝
目覚めた彼の前に忽然と現れるもの
それを何と呼べばよいか私は知っている