病み上がりのうた  09

することがないのなら

なにもせず

ただ時の流れるに

まかせればよいのだが

なかなかに時は流れず

相当生きてきたな と思うのに

私は まだ三十三歳にしかなっていない

 

さて その三十三歳の秋

はからずも肺炎をわずらい

まる一週間を寝て過ごした

食べて寝るだけの毎日

時間は小川の水のように流れ

一週間の終わりごろになって

ようやく退屈が兆してきた

 

してみると わたしは

元気がいいほど退屈するのだ

でも 病気にはなりたくない

今後 わたしは いっそう身体を大切にし

いっそう健康になり 

その結果 いっそう退屈するだろう

 

はぐれ雲浮かぶ秋空の下

病み上がりの身で ひさびさに

落ち葉の散り敷く道を歩いていくと

風のように訪れる ひとつの覚醒

わたしは ようやく 人生の折り返し点を過ぎようとしている