【たいわしたいわ 1】 はなす

連載「たいわしたいわ(対話 ⇒ 詩 ⇒ 対話)」 第1回 20142

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はなす

 

 

A 「はなす」を、漢字を使って書くときは、どんな漢字を使う?

 

B カイワ(会話)、タイワ(対話)、ワダイ(話題)、ワジュツ(話術)などの、ワ(話)。

 

A ほかには?

 

B ほかにもある? ああ、あるね。ホウソウ(放送)、ホウリュウ(放流)、ホウチョウ(放鳥)、ホウゲン(放言)などの、ホウ(放)。

 

A ほかには?

 

B キョリ(距離)、リトウ(離島)、リリク(離陸)、リコン(離婚)などの、リ(離)。

 

A 「はなす」には、漢字表記でワを使う「話す」、ホウを使う「放す」、リを使う「離す」、などがあるわけだ。これらの「はなす」の間には何か意味の上でも関連があるのだろうか。

 

B さあ、どうだろう。

 

A 関連がある、と僕は思うね。

 

B どうして?

 

A まずは、次の詩を読んでもらおう。

 

 

話す 放す 解き放す

心の思いを 解き放す

外の世界に 解き放す

はなすと 心が楽になる

                   〔1行アキ〕

話す 離す 引き離す

自分の思いを 引き離す

思う自分から 引き離す

はなすと 自分が見えてくる

 

 

B ことばあそびにもなっている詩だね。

 

A 「はなすと」と漢字を使わずにカナだけで書いたところがあるが、それは……。

 

B 「はなすと 心が楽になる」の「はなすと」は、「話すと」でもあり「放すと」でもある。「はなすと 自分が見えてくる」のほうの「はなすと」は、「話すと」でもあり「離すと」でもある。そういうわけだな。

 

A そのとおり。

 

B 「話す」「放す」「離す」の関連について君が考えたことの見当はついた。この問題について、だれかが何か言っていないか調べてみよう。

 

A 『日本国語大辞典』を持ってきたね。

 

B 「はなす【話・咄】」の語源について、こんな説が紹介されているよ。「ハナシは放シの義か」。「心事をハナス(放)の義」。「言語を口外に離スの義」。

 

                      (第1回は、ここで終わり)