【たいわしたいわ 1】 はなす
連載「たいわしたいわ(対話 ⇒ 詩 ⇒ 対話)」 第1回 2014年2月
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はなす
A 「はなす」を、漢字を使って書くときは、どんな漢字を使う?
B カイワ(会話)、タイワ(対話)、ワダイ(話題)、ワジュツ(話術)などの、ワ(話)。
A ほかには?
B ほかにもある? ああ、あるね。ホウソウ(放送)、ホウリュウ(放流)、ホウチョウ(放鳥)、ホウゲン(放言)などの、ホウ(放)。
A ほかには?
B キョリ(距離)、リトウ(離島)、リリク(離陸)、リコン(離婚)などの、リ(離)。
A 「はなす」には、漢字表記でワを使う「話す」、ホウを使う「放す」、リを使う「離す」、などがあるわけだ。これらの「はなす」の間には何か意味の上でも関連があるのだろうか。
B さあ、どうだろう。
A 関連がある、と僕は思うね。
B どうして?
A まずは、次の詩を読んでもらおう。
話す 放す 解き放す
心の思いを 解き放す
外の世界に 解き放す
はなすと 心が楽になる
〔1行アキ〕
話す 離す 引き離す
自分の思いを 引き離す
思う自分から 引き離す
はなすと 自分が見えてくる
B ことばあそびにもなっている詩だね。
A 「はなすと」と漢字を使わずにカナだけで書いたところがあるが、それは……。
B 「はなすと 心が楽になる」の「はなすと」は、「話すと」でもあり「放すと」でもある。「はなすと 自分が見えてくる」のほうの「はなすと」は、「話すと」でもあり「離すと」でもある。そういうわけだな。
A そのとおり。
B 「話す」「放す」「離す」の関連について君が考えたことの見当はついた。この問題について、だれかが何か言っていないか調べてみよう。
A 『日本国語大辞典』を持ってきたね。
B 「はなす【話・咄】」の語源について、こんな説が紹介されているよ。「ハナシは放シの義か」。「心事をハナス(放)の義」。「言語を口外に離スの義」。